内側にあるエネルギーに触れると、起きてくること
ある本を読んでいると、こんな言葉が目に留まった。
「素人の悩み相談は、問題を解決しようとする。一方、プロのカウンセリングは変化を助ける」
日常生活や職場での人間関係の悩みの翻弄されていた頃は
「どうすればいいんだろう」
「どちらが正しいんだろう」
「なぜ、こうなるんだろう」
というような問いかけの奥に解決の糸口があると信じて、答えを見つけにいこうとしていた。
先日、中学受験を控える小学6年生のお子様の保護者から相談を受けました。
「小学5年生の夏休み学習塾に通い始めました。それなり成績も向上しきている状況でした。だけど、小学6年生の夏休み期間中、朝10時から夕方17時まで学習塾に通って勉強を続けていたにも関わらず、夏休み明けの模擬試験での成績が大きく降下してしまいました。子どもも成績にショックを受けている様子だったとといいます。今後、どんな関わりをしていけばいいいでしょうか」というものだった。
一般的には、勉強時間だけに焦点をあてるのではなく、問題を解きっぱなしにしていないか、集中できる環境にあるのか、疑問点が出てきたらすぐに解消するような姿勢であるか、一日のタイムスケジュールの振り返りはおこなっているのか、というような具体的な方策に目を向けがちです。目に見える結果が重視する「受験」という分野では当然のことだろう。
僕は、「ところで、小学6年生ならテレビやゲーム、友達からの誘いも多いと思います。そんな中、お子様はどのようにして勉強時間を確保してきたんですか」
と尋ねると
「学習塾の自習室を活用したり、家ではテレビやゲームの時間をタイマーで計測しながら過ごしています。」
「それらは、最初から出来たのですか」
「いや、子供たちと試行錯誤しながらこの状態に落ち着きました」
相談者である保護者は顔をあげる。
「すごいですよね。合格という目的地へ向けて、急がずに着実に確実に歩んでおられるんですね」
そう伝えると何を言われているか、わかるようで分からないような表情をみせた。
「飛行機が、目的地へ向けて滑走路から離陸するとき、どれくらいの速度が必要なのかご存じでですか。機種にもよるらしいですが、ジャンボ機では時速250キロから300キロ程度だそうです。離陸できる速度に達するまで、滑走路を助走する必要があるんです。離陸するまでの助走中、速度30キロでも飛行機の高度は0メートル、速度100キロでも飛行機の高度は0メートル。速度は上がっていっても、高度に変わりはない。早く離陸したいからと気持ちから、低速の段階で無理に離陸しようとすると、目的地に到達するための飛行曲線を描くことは出来ません。違う目的地へ行っています」
とすると、今、勉強方法や受験への向き合い方に試行錯誤を続けるほど、飛び立つために必要な速度をより正確に見定め、離陸する一瞬を逃さないように狙いを絞っている途中なのかもしれません」
相談者の頬が微かに上向いたようだった。
人は、誰かから「あなたにとって有益だ」といわれる情報を頂いても、「ありがとう」という言葉とは裏腹に、なんか違うな、そこじゃないんだよな、感じるところがある。
そんな状況とは裏腹に、相手の話が続いていく場合がある。
「ありがとう」という言葉は感謝していると受け取られがちだ。そこにあるのは、言葉にはならない「たしかにそうだ」とい前向きな反応なのか「もう、やめてほしい」という前向きではない雰囲気の反応なのか。
言葉として表現されるメッセージと、言葉として表現されないメッセージ。常にそうではないとしても、その人が培ってきた経験に光をあて、描きたい未来を共に探し求めていく。もちろん経験則も必要だと思う。ただ、解決策を提案するだけではない、相手の反応に関心をもちながら何がエネルギーの源になってきたのかを大切にする人でありたいと思う。